木切れ/岡部淳太郎
者や看護士といったそこに勤める人々の力量や匙加減いかんによって、患者たちは健康か死、そのどちらの状態にも運ばれうるということになってくる(だからこそ、彼等の仕事は尊いのだとも言える)。
さて、そんなこんなで入院していまも病室のベッドの上に横たわっているわけだが、いまの気分はまるで海岸に打ち上げられた乾いた木切れのようだ。この身そのものが動かない木切れのようなものとなって、かつて一本の樹木の一部として葉を繁らせ花を咲かせ、あるいは実さえ実らせた過去を思い描いている。そんな感じである。実際病院というのはそんな乾いた木切れのような人々が多く集まってくる。彼等の多くは老人であり、人が年を取ればそれだけ
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