木切れ/岡部淳太郎
七月四日、入院した。五十五年生きてきてはじめてのことだった。それまでは若い頃に酒の失敗で急性アルコール中毒で一晩入院したことがあるだけで、本格的な入院は初めてだった。いまも病室のベッドの上でこれを書いているが、どうにも奇妙な気分ではある。ついこの間まで一人の人間として社会の中に放り出されながらも何とか生きてきて、一人の詩人として偉そうに書いたり語ったりしてきたのだが、病気という一つの事象によってそれらが無効化され、意味のないものへと収斂してゆくのを感じてしまったからだ。そうすると、普段の健康な状態であってもそれらは意味があったのかということにもなってくるようにも思えてくる。普段の健康な状態の人々
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