純粋遊戯/ただのみきや
 
手持ち無沙汰に膝にのせ
撫でたのは 猫でなく
ことば以前のなにか
死者からの便りのように
ふとカーテンをはらませて
沸騰する
静けさに
肌をそばだてながら
缶ビールの残りを一気に飲み干すと
壁の中の流れをさかのぼる
迷いの先端は鋭利で冷たい
螢より澄んだ朝の涙形
蝶々の知恵の輪も
耳孔ふかく降りて行く鈴(りん)のような光も
すべてが波形を失う中
彫像は燃えていた 刻一刻
影に似たその舞踏で

記念日に買ったバラのよう
すべてを明かすこともなく
自らの中へ没するもの

囁きの抜け殻が大気に充満し
不可視を触診する
眼差しは
陰陽図のように己を喰
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