道連れ/莉音
先の見えない不景気の中
人を陥れる異端(カルト)も増えた
彼はその庇護者でさえあった
彼は箍(たが)を憎んだ
固定化された階級社会の
錆びついた玉座に腰かけながら言った
我らにもっともっと力を与えよ
もはや「戦後」ではないのだ
虐げられた者の一人が
彼の産み出した恐怖(テロル)となって
その背後に迫っていることも知らず
その血肉は一つの人間に過ぎぬことも忘れ
彼は討たれた
人々は驚き、心を痛め、彼を弔い
権力に力を与えてしまった
こうして民は選び取った
彼とともに道連れとなる運命を
或る神学者はこう言った
地獄への道は善意で敷き詰められている――
*
歴史の針は戻ってしまった
恐怖(テロル)によって国が揺り動かされる時代へ
彼の死によって
「戦後」は終わった
もう時間は残されていない
わたしのすぐ目の前に迫っている
軍靴の音が
全体主義の悪夢が
今日は戦争前夜
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