きみの子午線をたどる旅/ただのみきや
 

こころだけハリセンボン
精一杯ふくらんで
鏡の前でニッコリ笑う
そんなきみが大嫌い
ウソウソ本当は好きだから
針でつついてあげる
ほらパーンと弾けて
辺りは皆殺し
でもこころだから
こころの中だけ皆殺し


開いた本の上を
ダニが歩いていた
見開き左右
記号で出来た二次元の街を
赤い点が移動する
ペン先が禍となって
天からダニを襲う
逃げ回る
ナスカの絵のように
大きすぎる迷路に
戸惑うこともなく
難なく直進して
だがなん度目かの禍で
ダニは圧死した
微細な体液の
生と死の捺印と
わたしの愚行により
頁は汚されていた
物語とは関係のない
物語のために
数秒間それは
意味を失していた
そんな記号の羅列
二次元の廃墟を
わたしたちは駆け抜けたのだ


                 《2022年7月2日》







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