左奥歯/あらい
ふわふわしてぽっかりした
海老或いは蟹。
雲の上 蜘蛛の餌食
空いた口 垂れ下がる前髪 咥えただけの空蝉が煩い
あれはナツのことだろうか。
画廊から数歩落窪んだ辺りに どさりと膝をついた
子猫のポーズで
わらう
みょうごにちの紫陽花だったものが
枯れ果てたあと
ハーバリウムの
五感で。
感じ取り咲き乱れた 花火が爆ぜ 余韻とし
燻っただけの カレカノジョの 香りにいて。
裂傷痕が縦に盾に
その程度の情報を往来する。
あいつらの、時間はだれも。
勿論 苦虫を噛み潰したような 甘い痺れが
モルヒネのごとく
カナツギされた自堕落に、遺されているから。
外へ出ますと 又 匣が、口を広げて
偉ばった雪山の 街灯も乏しいだけの 彼ハ色の
ひざのうえにて
かみしめる――八歳の、母
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