ススキノの思い出/板谷みきょう
 
が言い出した

「ボクの知ってる歌い手が
拉麺屋をやってるって言ってたから
みんなで其処に食べに行こうか。」

そうして六人で連れ立って
店の名前を確認しながら
先頭切ってボクは歩いた

「あっ。此処だ、此処だ。」

ススキノの件の拉?屋に入ろうと
暖簾を潜ると、そこで見たのは
テーブルの上一杯に
びっしりと並べたプラスチックのタレ瓶に
溢さぬように醤油を
注ぎ足している彼の姿だった

必死で醤油を注いでいる彼を
勝手に拉麺屋の店主だと勘違いしたボクは
「食べに来たよ。」と声を掛けると
顔を上げて嬉しそうな顔で
迎え入れてくれた

みんな其々に札幌ラーメンを注文し
各々の空腹を満たしていた

勿論
その時の支払いは
ボクが払う羽目に
なったけれども
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