ススキノの思い出/板谷みきょう
 
ギターケースを片手に
いっぱしのフォークシンガー然として
ススキノの夜を闊歩していたのは
怖いもの知らずだったからだ

流行に乗らないことが
格好良いと考えてたし
蔓むことも潔しと
思わなかったから
我武者羅で貪欲に歌える店を
転々としていた

そんな時に出会った若者から
「みきょうさん。
ボクも歌って食えるように
頑張ってるんですが、今は
ススキノで拉麺屋やってるんです。
是非
今度、食べに来てください。」

ある夜
ライブハウスで歌った帰り
「なんか食べに行こうぜ。」
テンションアゲアゲのライブ終了後に
幾許かの日銭で温かくなった懐で
誰かが言
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