正風亭(推敲後)/武下愛
 
頂き、私はとても幸せでございます。

正風亭の隣に在る小さな、私の城である住処へてくてく向かいます。大工さんに建てて戴いた正風亭と御揃いの外観です。菊が飾り彫りされた樫で作られた引き戸を開くと、畳の青臭い香りがします。草履を脱いで、母から受け継いだけれど、木製である事しか分からない衣装箪笥から、着物を出します。着物選びは迷いますね。四季を感じて戴ける事も正風亭では大事です。三十着の着物の中から全体が真黒で雪景色から鶴が空へ舞い、鶴の足からはらはら落ちる雪片の着物にしましょう。帯は金色で紅葉三葉が散り散りに成る、赤が映える帯にしましょう。受け継いだけれど、新品の様な姿見を見つめ着物をはおり、袖を
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