正風亭(推敲後)/武下愛
寒くなってきました。若くて青かった葉は赤く燃え、銀杏の葉は黄色く笑っている様です。地に落ちて乱雑に散らばっていてはかわいそうでしょうに。そのままでも美しいと仰る方もいらっしゃいます。ですが、人も葉も手心を加える事で更に美しさが増します。女によっては心配り《見た目、行動を、場面によって変えなくては生きていけない》です。一葉、二葉と黄色と赤が、落ちたくないと切望する様に、はらはら地面に落ちていかれます。人が苦を感じて混乱したまま転がり落ちる様で、心臓がキュッと掴まれました。心も痛みます。時計の様に思い巡らせながら、葉、銀杏の実を拾い思います。
淡く息吹く春へ思い馳せます。桜の枝にはまだ若い葉、夏
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