盗賊ヨランの旅(七)/朧月夜
 
「ございます。しかし、魔法弾を浪費することは避けたほうが良いでしょう」
「ならば……」と、エイミノアはひときわ大きなグルレッケに向かって、剣を構える。
「お前がグルレッケの頭(かしら)か。いや、我々の言葉など通じないな」
エイミノアは剣を横構えの構えにして、その長らしいグルレッケと対峙する。

「どうしましたか? 剣が震えて止(とど)めをさせませんか?」
「何を言う。わたしとて、歴戦の戦士なのだ。盗賊ヨランよ」
「ならば安心です。事前に罠を張っていた甲斐もありました」
「すべては、お前の思惑通りだと言うのか?」エイミノアが叫ぶ。

「いいえ、盗賊とはいかなる事態にも対処できる者なのです」
「小癪なことを」そんな台詞とともに、エイミノアが跳躍する。
その剣は、グルレッケの頭の喉元に向けられた。「勝ったか?」

エイミノアは剣を振り下ろした後ろを振り返った。
青い鮮血が迸っている。どうやら、グルレッケの頭目を倒したらしい。
「さすがですね。エインスベル様の傭兵団の長だけはある」  

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