硝子一粒、海。/武下愛
初めの一粒は丸みを帯びてさえおらず
二粒三粒とぶつかり合って砕けては
刺さりさえした
色合いはその都度変わり続け
真っ黒になった事も有った
増えていく度に刺さり続けていた硝子も
気付けばぶつかり合う事で丸みを帯びていた
真っ黒だった色も
透けて透明になって行った
一粒一粒に色がある事に気付く頃には海になっていた
私は飛び込む事を初めは恐れた
溺れてしまうのではないかと考えてしまったのだ
陸を越えて私を飲み込んだ時気付いたのであった
私は溺れない事を知って
また一つ硝子の粒ができた
その硝子の粒には名前が無い
今も名付けできていない
だから何時か何時かと歳を重ねていくのである
私にとっての海は端的に大きなモノとしてある前に
一粒の集合体なのである
私は海にあなたと名付けている
あなたの一粒一粒が今日も鳴いています
色彩は淡く光っているように見えています
海と私は守りあっています
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