盗賊ヨランの旅(二)/朧月夜
ヨランは苦笑した。彼にはエイミノアには見えていないものが、
見えていたのである。それは盗賊としての本能のようなものだった。
「わたしがどこを目指しているのか、お分かりですか?」
と、ヨランはエイミノアに尋ねた。
「お前の目的など知ったことか。大方酒のことでも考えているのであろう」
「それもあります」ヨランは苦笑する。「しかし……」
「最終的な目的地を知っておいても良いでしょう。
わたしが目指しているのは、幽冥界です」
「なんだと? お前は次元跳躍を使うつもりなのか」
「いずれそうなるでしょう。しかし、今はまだその時ではありません。
もう少し行けば、あなたもわたしの真意がお分かりになります」
盗賊ヨランは平然としていた。その眼には、エインスベルだけが映っていた。
彼女は、ヨランにとってもかけがえのない存在だったのである。
(わたしだけが、エインスベル様を救うことができる)
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