彼の欠片/ホロウ・シカエルボク
 

公園の、古い
石を組み上げただけのベンチで
左腕をだらりと投げ出して
男が眠っている
俺には確かに
そいつは
眠っているように見えた
なんなら
幸せな夢の中に居るみたいに

一時間後、二人の警官が
ばたばたとやって来て
眠る男を覗き込んだ
それから短い話をして
その途中で
一人の警官が俺をちらりと見
もう一人とまた話して
もう一人も俺をちらりと見た

一人はベンチに残り
どこかに報告をしていた
一人はこちらに小走りでやって来た
失礼、いくつか質問させて頂きたいのだが、と言った
強い汗のにおいがした
いいですよ、と俺は答えた
「ずっとここに?」
[次のページ]
戻る   Point(1)