パンフレット/末下りょう
 
や立ち見客、スクリーンの前で遊ぶ子供たちの大きな影は時代とともに消えていってるけれど変わらないこともある。スウッと暗くなるシアターに生まれるひそひそ話や恋人たちの物音、背の高い人がドカッと前に座ることや隣の人がいいところでトイレに立つこと、あちこちでポップコーンやジュースを飲み食いする音、駄々をこねる子供や誰かが大声で笑ったりしくしく泣いたりイビキをかいたりするそんなエモーションのなかで映画を観る苛立ちや歓びを死ぬまで味わい尽くしたい。それはパンフレットを集めだした頃のぼくやあの頃の両親がぼくに教えてくれたことでもある。
戻る   Point(2)