蠅の王が見ている/ホロウ・シカエルボク
 
に世界が歪んでいる気がする、暑さと、おそらくは俺自身の歪みのせい、だけどその歪みは、あくまでもごく一般的な感覚に照らし合わせたものさ、俺はひとりしか居ない、でも、ある種の人間たちは、まるで、一本の幹から盛大に派生した枝みたいに、まったく同じように考え、話すことが出来る、潰れたライブハウスのそばの自動販売機で老人がうずくまっている、安い酒のケースを積んだ軽トラックがその横を走り抜けていく、流行病が幅を利かせるようになってから開けたことがない食堂の前で、貧血のように白い猫がこちらをずっと眺めている、アーケードの中で自転車の急ブレーキ音が響き渡る、それから怒号、俺は猫の目を見返している、新しい政党が中央
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