ふるさと/ひだかたけし
 
手押し車を押す老人
たいまつの火は燃えている
異郷のこの地にひとり立ち
遥かな地平を凝視する

わたしはふるさとを持たず
同じ道を通い帰る
痛む脳髄を密かに抱え
それは静かに歩いていく

わたしの還るふるさとは
たましいの奥処に座している



戻る   Point(6)