園子とその子のそのこと/末下りょう
 
いた
周りの友人ともそんな軽口を叩き合ったりしていた

神経質なヒールの音だけが響くはりつめた早朝の町から逃げるように園子はバス停に向かい
十一月の冷たい風がまばらな勤め人や学生たちの髪や衣服を揺らしている

時限爆弾になったような気分で園子は静かな列の最後尾に溶け込んだ


時刻表通りに到着したバスのステップに足をかけて 一人分の運賃を投げ入れると 運転席のすぐ後ろの席に座って背筋を伸ばす


園子とその子のそのことを乗せたバスは 信号の少ない道に出た途端スピードをぐんぐんあげていく





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