園子とその子のそのこと/末下りょう
 

この世に子を産み落として育てる自信など園子にはなかった


どちらの男の種かも分からないのだからなおさらだ


女の不貞は男のそれより罪深い そんな古めかしい考え方に園子は頷けなくもない 
今となっては

特別好みでもなかった二人の男 そのどちらの種なのか園子には知るよしもなく いまはそれを知りたいと思う余裕すらない


オスがメスを無意識に恐れる理由があるとしたら根本にはこのへんの事情があるのかもしれないと園子はなんとなく思う


色や形の似通った家が並ぶ坂道を小刻みな足取りで下りながら園子はお腹を軽く撫でてみた
ここまで来たら子供など出来っこないと思っていた
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