透過の雨/ホロウ・シカエルボク
現実や幻想など
本当はこだわる必要もないものだ
たったひとりの人間が生きる上で起こること
そこに余計な線をなぜ引きたがるのか?
もはやどちらでもよかった
温かければ生きていて、冷たければ死んでいる
それについてなにか、ひとつの
自然な詩情があればいい
命は心だ
それ以外に変えようがないものだ
時計は参考までに
本当に知りたいのは均等に小分けされた時なんかじゃない
いつだって雨の予感を含んだ生温い風だ
世界は濡れたがっている
みんなどこかで目を覚ましたがっているのさ
信じているものはいつだって実態のないものだ
だからこそ実感を頼りに
数十年を転がるものでいなければならない
いま、立っているその場所を肯定したらおしまいだ
靴底はたちまちにその路面を複写して張り付いてしまうだろう
俺は目を閉じる
まだ見ぬ明日も通り過ぎた過去も
同じ顔をして
こちらを見返している
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