世界がオワだなんて、そんな!/角田寿星
かと思うと、王子さまはその光を浴びて、
まるでスローモーションのように、ゆっくりと倒れていきました。」
ひとつの時代が終わろうとしていた。形勢は傾いていた。
囲碁本因坊戦の大盤解説で、梶原九段は飄々と終局近しを告げたっけ。
「ああ、この一手で、この碁はオワですね。」
このことばを待ってた全国の囲碁オヤジは手を叩いて喜んだっけ。
終末を声高に叫ぶひょろ長い救世主を、少女が道端に落としてしまった人形
を、先へ急ぐ人々の足が次から次へと踏みつけていく。
6
薄明のなか 混沌の時代からずっと
運命の糸を紡ぎつづけていた三姉妹が
とうとうキレちゃった
「けけけけ」と奇声を発しながら
ぼくんちの5階の窓から侵入してきて
大バサミでありとあらゆるものをブッた切って
長い髪と薄手のスカートをなびかせて
美しく踊り狂って
去っていった
ブッた切られた
スキマだらけの世界でぼくはへたりこんで
ああ これも運命なんだろな
うすぼんやり思った
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