記憶/ぱーちゃん
 
あらゆるものは
輪郭を失い
霧のように立ちこめる
私は私の中になく
外にもない
街は街の中になく
外にもない
私は街の中になく
外にもない
街は私の中になく
外にもない
むきだしのスピード

雲間からさしこむ光の束が
孤独をつかむ箸になるなら



振り返ると
記憶の車列が
むこうから

輪郭をかすめ
視界をかすめ
走りすぎていく街に
投影される
足を踏み出すごとに
投影される記憶
足を踏み出すごとに
私はいない



視線はまっすぐ
通りを這っていく

コンビニが見える
公園が見える
ポストが見える
一つ一つ記憶を滲ませるように

薬局が見える
ファミレスが見える
ガードレールが見える
一つ一つ記憶をなぞるように

学校が見える
電柱が見える
マンションが見える

舗道は地平線を越え
自らの頭をなぞるように

空が見える
星が見える
月が見える

右手には箸
一人の食卓へ向かう




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