かんむり座/
佐々宝砂
初夏の夜、首が痛くなるほどに
高い空を見上げて、
あれがかんむり座だよと、
いつかそう教えたのに、
あなたは忘れてしまった。
七つの星でできた王冠を、
あっさりと投げて捨ててしまった。
あなたはつまらぬ男だ。
わたしは王冠を拾い上げて、
わたしの髪のうえにのせる。
星の王冠は空気よりもかるい。
それからわたしは、
カラス座の帆をぴんと張って、
あなたのいない大空に船出する。
未完詩集「百鬼詩集拾遺」または「続百鬼詩集」の「天体幻想」より
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