野に咲く狂気/ただのみきや
 
鍵のない耳奥に
埋葬された子どもたち

老いた風鈴の乾いた表層から
剥がれ落ちる沈黙の音韻
つめたい水面を渡る巡礼
つかみ損ねて溺れてしまう
耳目は濃い光と影に

大気の心臓は屏風の向こう
通風孔から迷い込む
炎をたなびかせた金魚たち
傷口に紅を差し
他者の眼差しだけをまとった女

ラジオ体操の笑い声
夏の幽霊たち
熟する前に裂果して
いま爛熟の極みを迎えたか
滑舌よく舐めまわすナメクジの
苦味で対峙する無限大があった

紙から一斉に目覚めるもの
ささやき未満の湿った息で
鳥の群れを覆ってしまう
こころを腫らした人々の
廃棄を前提とした数式的祈り
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