文化会館の用具箱の隅に残されていたいくつかの書き置き/ホロウ・シカエルボク
それが
正しいか間違いかなど
たいした
問題ではなく
ただ
あなたが
ひとつでも先に進んだときの心を
夏が人々を焼き払ってゆく
わたしはグレーの作業服を着て
かれらの骨を拾っては脇へどける
サイレンの意味するところはわからない
わたしにはどこにも行く気がないから
滅法生えた雑草の向こう、どこかしら不安定な
不自然な空き地のなかに
むかし暮らした家を見つけた気がしたのは陽炎のせいだったのか
カラスが野良犬の死骸を戯れに啄んでいる
色褪せた手紙に書かれていたのは
もう死んだ知り合いの名前ばかりだった
そのひとつひとつを細かく思い出そうとしてみたけれど
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