やちまたの記/おろはげめがね
小粒な貝殻が天使の爪となり
冷たい海水でその羽を洗うような朝
紺碧の海に笑う神々の声みたいな
波の音が轟きその間に間に凪いだ水面
今生で忘れかけていたことを喚び起こす
その潮の干満に合わせて満ちる香り
藍色から茜色に染まって行く空に
点々と漂うように飛んでいる鳥たちは
その白さ故の純潔じみた鮮やかな姿を
自らは殊更に認めることもないのだろう
僕はそんな光景に倦み疲れてしまった
今日は美しい感情を抱けないようだ
それでも眼前の晴れ渡る広い空に
頑是ない子供の頃の無垢な夢を見る
もう忘れたいのだろう黄金色の夕焼け
盲目の恋に身を焦がしたあの日々の事
忘却に身を委ねまた茫
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