囚われのエインスベル(四)/朧月夜
そのころ、盗賊ヨランは久しぶりにクールラントへと戻っていた。
そして、カラスガラの酒場で、美酒に酔いしれていた。
「やっと見つけたぞ、ヨラン・フィデリコ。
大方、次の盗品の目星でもつけていたのであろうな?」
「何をおっしゃいますやら。あなたは傭兵団の長、エイミノア様ですね?」
「いかにも。今日はエインスベル様の件で参ったのだ。
そなたの怠惰は決して許さぬぞ」
「ははは。わたしは幽冥界へと、ちょっと赴いていたのです。
幽冥界の時間の流れは様々ですからね。それで数か月の時を要しました。
それで、エインスベル様の件で用事とは、何事です?」
「それだ。彼女を牢獄から連れ出してほしいのだ」真顔でエイノミアが言う。
「それは難題ですね。それで、わたしが得るものは何になるのでしょう?」
「冒険の日々か。快楽の日々か。いずれにせよ、そなたが望むものであろう」
「分かりました。引き受けましょう。わたしもエインスベル様の側近ですからね」
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