陸に上がったワンピースの話/万願寺
した。うすむらさきはよく歩く人だった。白い影はいつのまにか少女のかたちをして彼女に「それでは」とお辞儀をしていた。「では、そのように」とうすむらさきも応えて、きれいに生え揃ったまつげを伏せて、ゆうがなお辞儀をした。
たくさんの形や、天使や、鳥や、とっても高価な、重くてごつごつしてたくさんの細かい装飾がなされた、もとは金色の額縁などが、うすむらさきに運ばれていった。そしてよく歩いて、丘にはいつの間にか道もできている。たくさんの動物達がうすむらさきのワンピースの柄になりたがった。みんな泣いてお願いした。でもだめだった。うすむらさきのワンピースの柄は、なんにもなかった。なんにもないという柄を
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