陸に上がったワンピースの話/万願寺
うすむらさきのワンピースを着たほっそりした女が丘の上をあるいている。この女は主人公ではない。この女は主人公ではないが、とても重要な人物であることは確かだった。うすむらさきはそのまま黄緑の丘をすらすらと進んでいって、一軒の家に入る。そこでは男の人がわんやわんやとお話をしている。うすむらさきは、ふん、と思ってしばらく黙って聞いていた。そのうちに、誰かが歌をうたおうと言い出した。それでうすむらさきは我慢ならなくなって、家を飛び出した。その時には白い小さな影が女についてきていた。その影のはしをつかむともなく右手にちょっと巻き付けて、うすむらさきは歩いていった。おおきな空が絵画のように金色の小麦を照らした
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