五月の夜/塔野夏子
 
闇に
幾人もの私が
ほどけて

緑と水の匂い

翅あるひとの気配が
呼吸にいりまじる

ほどけゆくままに
ひとつ
   ふたつ
ともる
   ほたる


になるかならないかの
空気の動きを
しずかに
奏でる指

遠く
時鳥の声


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