昼下がりの/末下りょう
凡庸を語らい ルーティンと持久力を讃え 乱数と成熟を愉しみ 樹液と記号の蜜月をまつりごとに闇の生物と貿易を交わす耳殻の空中庭園に野バラが咲き乱れ 藻の森のマシーンは朝霧に包まれたエメラルドに変態して幾億の風に砕け散る
海光を帯びた黒髪を遠く西になびかせながら微笑んだ JK
ふくよかな友人の呼び声に振り返り
僅かに硫黄の匂いをさせはじめた見開きが閉ざされると
JK の
頬をかすめる熱風
瞬きのはばたきをまなざしが解き放つ
かりそめの昼下がり
有閑なデボン紀の書店には
てらてらのスーツを着たマネキンが紛れ込んでいる
春の風によれた脱け殻らしき空虚に
投げつけられるきらめき
カリスマ書店員たちの
白い目
紺色のスポーツバックと世界文学 JK は夏草の匂いを引き連れて愉しげに
雨上がりの光の影を踏んでいく
脱け殻のようなマネキンの成体はもう何処にもなくて
世界40ヶ国以上の文化と言語に耐えうるという物語が重ねられていく
平積みという地層に
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