デッドマン・ウォーキング/ホロウ・シカエルボク
、ほんの少し空が白くなったような気がする、夜明けまでにはもう少しあるはずさ、すべてのことは色褪せてからが最も長いとしたものだ、飲み会帰りの数人のグループが甲高い声を張り上げながらタクシーを待っている、流行歌を歌っているようだがそれが誰の何という歌なのか俺にはわからなかった、近頃の音楽はたった1人の人間が書いているように思える、浅はかな愛と希望、浅はかな夢、ロックンロールは嘘みたいなラブソングしか歌わない、想像してごらん…道路の脇にカウルの破片があった、そういえば数時間前に救急車のサイレンを聞いた気がする、こんなに広い直線道路で事故を起こせるなんて稀有な才能だという他ないね、遠くで誰かのクラクションが聞こえる、それは遥か昔、愚直なまでに歌い続けた誰かのことを思い出させる、何も変わっちゃいない、確かに時代は変わる、でも大方の人間はそれに着いていくことが出来ない、マスターベーションのように人生を肯定することなんて出来るわけがない、夜が明ける前に家に帰ろう、ほんの少しでいい、眠ることが出来たらコーヒーでも飲みに出かけることにするさ。
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