デッドマン・ウォーキング/ホロウ・シカエルボク
る、あいつの頭の中にはきっと、パンク・ミュージックの原型のようなものが流れているはずだ、路面電車が終点で身体を休めている、この時間にはこの辺りをうろつくような人間はあまり居ない、車の流れが途切れる僅かな時間には世界はもう滅んでしまっているのかもしれないと信じさせるくらいの何かが潜んでいる、それはこの土地に降り積もった過去がぽつぽつと語る予言なのかもしれない、自動販売機でスポーツドリンクを買い、二息で飲む、世界が滅んでも俺の暮らしにはきっとそんなに変わったものはないだろうと思う、もちろん、生き残ることが出来たとしてのことだけど…俺の様子を見ながら一台のタクシーが走り過ぎる、俺は空缶を捨てて溜息をつく
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