デッドマン・ウォーキング/ホロウ・シカエルボク
ポリバケツの中に廃棄された腐敗し続ける狂気と、その肉を狙うドブネズミの低い鳴き声、名前も知らない薬の効果偏頭痛に変わる日常の蠢き、まともな時間じゃないのだから文句を言うのは筋違いってもんさ、月は薄曇りの空の中で、時折こちらをうかがう目のようにそこにあった、雨の後の行き場のない湿気は悔恨のようにまとわりつき新しい苛立ちの原因になった、脳裏に繰り返し再生される血塗れの大仰なナイフ、それが誰の血かなんて考えるまでもなかった、俺の人生に関係する血の通う誰か、それは俺以外に存在しはしないのだ、擦り切れた安物の靴底がアスファルトの上で滑る、悪態をついて歩くスピードを落とす、明日は晴れると天気予報は言っていたが
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