失うということを得た/こしごえ
 
空の下 大地の上で
「気楽に行こうよ」と
自分に言い聞かせる私の
「私自身の死を思えば、私についての
何事も大したことではない」と
自分に言い聞かせる私
世界の一部である私の
明日を知らない私の
さまざまな物事を忘れる私の
今を生きる全ての
私は
誰でもない
私だ。

その時私がどんなことになっていようと
世界はただ過ぎてゆく
冬にしんしんと雪は降り
春に風光り 梅雨に涙多く
夏にかげろうゆらめいて
秋に葉は紅くなる
私が死んで居なくなった後も
私の居た世界は未来へと続き
いつまでか 季節を歌う
何億年か 何千年か 何百年か 何十年か
歌う
歌う世界
その時あなたも
歌っているといい

今を 歌う
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