曇り空/シギ
戻すのです
私の手中に
残されたのは、
ただのフィルム
像を見る余裕も無い
恐ろし過ぎる、と
そのフィルムを焼き払う
そこに居たのは、
貴方、だったのでしょうか?
出し損ねたことに
気付いてしまった其の時、
私は私の愚かさを忘れて居たのです
目を、逸らして居たのです
だって
私以外の腕に抱かれる
太陽、そして、
貴方になんて
焦がれることすら
出来ないのだから
詠まれた歌の
読み方を理解出来ず
結い紐で髪の毛を束ねました
貴方を抱いた其の人は
流れるような、
漆黒の髪でした
貴方が口ずさんで居た歌、と
あの日に失った、狐火
もう、世界は
元には、戻せないのに
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