曇り空/シギ
出し損ねた此の腕に
抱きたかったのは其の太陽でした
黄昏色の雨が降り
世界は黄金へと
変わり果てるというのに
人々はまだ
愚かさに溺れている、と
いうのでしょうか
あの日に押されたシャッターで
残された光景が
どんなものだったか、なんて
もう覚えては居りませぬ
私が知って居るものは
ただ、
貴方が口ずさんで居た歌、と
あの日に失った、狐火
だけ
なのです
詠まれた歌の
読み方を理解出来ず
結い紐で髪の毛を束ねました
定刻、
黄昏色の雨はやみ
黄昏色の雨は闇に
融け、
世界はまた、
人の愚かさを、隠すように
汚れを取り戻す
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