打ち壊したの章(ブレーキで二輪車を担ぐもの)/アラガイs
 

はじめに言っておくがわたしはこれから仕事をしなければならない。たった一時間だが、1100円と少し色つきの重労働だ。これから丑三つ時を過ぎれば街は深く暗い静寂に覆われる。路面も眠っている。陶酔感よりもリスクのほうが心配になる。季節を変えて雨風が容赦なく脆弱な身体を懲らしめるだろう。わたしは鈍った足腰や眠気を抑えつけてもこの二輪車で立ち向かわなければならない。無論使命感など持ちたくはないが、無理にでも期待され任せられれば使命感も立ち上がるというもので、ああ、まったく困ったものだ。振り返ればこれも無知の仕返しだと根に深く思うのもやめた。ただ糧として小銭入れにつないでおくこと。これも自分が撒いた種だと
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