花と終わりの迷路/木立 悟
 




光の文字を裏返し
水の警笛 真夜中の息
窓をすぎる 蛇の横顔
墨の季節 矢印の季節


朝も午後も夜もなく
曇りの音に満ちている
ひらくことのない雨の手のひら
冷えた線だけが降りつづく


曇を砕く武器が
青空の下に並び
翳り出すのを待っている
届かない伝令を待っている


階段の踊り場に置かれた造花
大砲の視線を向けられつづけ
夜を曲がり 夜を曲がり
星への報告を忘れつづけ


街角にひしめく機械には
水彩の匂いがたちこめて
ふらふらとまたふらふらと
無条件の幸福があふれ出す


常に揺れつづける世界を
花が覆っている
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