アースランテの潰走(三)/朧月夜
 
結局、ナハテ・イルヴァの丘へと辿り着けたアースランテ兵は、
三万五千ほどだった。ルブルス河の南岸にいあわせた友軍と合わせて、四万五千。
その間、連合軍による追撃は行われなかった。
双方ともに、このまま戦いを続ければ消耗戦にしかならない、

ということが分かっていたのである。
アースランテの新たな軍団長、ゴゴイス・リーゲ、
ラゴスの軍団長、カイザー・ネル、クールラントの軍団長、ラジーク・ユーゲル、
ヒスフェル聖国の正魔導士、オスファハン・ラ・フェイブル。

そのいずれもが優れた知将だったのである。
そのことが、第一次ライランテ戦争の戦火を拡大せずに済む要因となった。
ライランテ大陸の危機は、一時去ろうとしていたのである。

「後は、ラゴスの南部をどうするかが問題だ」ゴゴイスは言う。
「撤退か、それとも死守するか……」
「まずは撤退を選びましょう、軍団長どの」ゴゴイスの側近ヤロスは答えた。
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