それぞれの戦い(十二)/朧月夜
 
「全員、南進を止めよ。カバルナ・クー・ソランの結界が張られた!」
アースランテの臨時軍団長である、ゴゴイス・リーゲが叫んだ。
「それでは、どうなさいますか?」ゴゴイスの側近が尋ねる。
「西へ向かうのだ。そして、ナハテ・イルヴァの丘で友軍と合流する」

「それでは、ルブルス河の南に残っている、友軍にはどう伝えましょうか?」
「友軍には、西にあるナハテ・イルヴァで合流するようにと、伝令に伝えさせよ」
「分かりました。それでは、本軍はどうするのでしょうか」
「分かり切ったことを。西へ向かい、ヒスフェル聖国軍の魔導士団を突き破る」

ゴゴイス・リーゲもそれなりの知将だったことが、このことからも分かる。
南進すれば、包囲殲滅の危険もあると判断していたのである。
とくに、ルブルス河にかかっている、自軍の橋が問題だった。

ここで移動を躊躇したり、遅れれば、包囲殲滅の憂き目にあってしまう。
ゴゴイス・リーゲの判断は的確だった。同盟軍のオスファハンも、まさか
アースランテの主力部隊がこちらに向かってくるとは、思っていなかったのである。
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