断層の誕生/ホロウ・シカエルボク
 
、そして少なくともその中のひとつにはなれないだろう自分にほっと胸を撫で下ろした、自分で作り出した渦に飲み込まれないこと、自分で作り上げた罠に脚を挟み込まれないこと、そして、百万の愚行にも勝るいくつかの功績を生み出すこと、それが俺の人生の指針になった、それはささやかなもので構わない、俺自身がそれに感じることが出来れば、他人がそれをどう思うかなんてことにはなんの意味もなかった、俺とわりかし近い道を歩いてる連中は訳知り顔で主観だの客観だのという言葉を繰り返したけれど、俺はそんなまやかしを信じなかった、人は誰でも自分自身でしかありえない、紙の上に何かを書きつけようとするものは自分自身であろうとするためにそうするのだ、それ以外の理由などどこにもなかった、これまでも、これからも、思うに俺は、生まれてすぐに、育つはずのない骸の中に押し込まれ、どういうわけか上手い具合に育ってしまったというわけだ、だから、そのことを忘れないように最後まで書き続けるというわけさ。

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