連合軍の反撃(十四)/朧月夜
 
クールラントの軍勢は、連合軍の最後尾に陣取っていた。
これは、敵の挟み撃ちを防ぐためである。
しかし、敵は中央突破を図ってきた。なぜだろうか?
この戦場を、冷静に観察している者がいた。エインスベルである。

「敵は、数的には我が方の倍。力押しも出来るはずだが……」
エインスベルは訝しむ。そのころ、アースランテの軍勢は、
その半数ほどが連合軍の内部に踏み込んでいた。
「これでは、範囲魔法が使えなくなる」エインスベルは呟く。

「もしや……敵は倒せるだけの敵を倒した後、撤退する心づもりなのか?」
それなら──と、エインスベルは思った。そして、唇をにやりとさせる。
「アースランテの蛮族どもよ。今こそ、汝らを殲滅してくれよう」

エインスベルは、敵軍の後衛に向かって、空間収縮の呪文を放った。
この魔法、ヒアシム・カインは禁忌の魔術とされている。
アースランテ軍の上空の空が割れ、空間の裂け目が現れた。
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