詩の日めくり 二〇二〇年四月一日─三十一日/田中宏輔
 
沈めたわが池に雨のかはりと花ばかり降る

喉や渇く 夏秋冬をぜんぶ足したら春になるそんな気がする

夏秋冬を消してみるこれはもう春の逃げ場がないのではないか

推理の過程の怪(け)しきこと落暉にさへもまさるとや「ユダが美貌であつたなら」

夏眠のあとでねぬれぬ夜が待つてゐた巻いても巻いてもネヂはもどつた

わが家族(うから)つれだちてゆく縁日の帰りは誰かがゐなくなる

貨車がゆく 夜が夢をみなければ昼が生まれることはなかつた


二〇二〇年四月三十日 「クスリ」


 クスリはまだ10日分あったのだけれど、来週はゴールデンウィークで、いつも行ってる烏
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