私たちの近道/りす
 
自由に飛べるのか
私はその人に尋ねた
「鳥には考え事がないから、」
空を見上げて その人は言った
「かわいそうに、今日も明日も 飛べてしまうのね」

かわいそうな鳥たちの 楽しそうな鳴き声は
夕陽に焼かれるように しだいに遠くの空に消えて
その人の顔や体も 暗がりに輪郭を無くして
わずかな手の感触だけが その人と私のすべてになった
わたしはその時 遠くへ行くのだな、この人と
と理解した けれど
冷たい小さな手を今も 握り返すことが できないでいる



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