その手をはなさない/ベンジャミン
 
れをも知ってしまった

より多くを掴むために成長したはずの
手のひらは
そんな淋しさまで記憶して
刻まれたしわを深くするようにまるめれば
生まれたときのかたちになる

生きようとするほど
いくつもの別れが臆病にさせる

けれど
つながれた手の
そのときに増す確かな温度を覚えているから
だから
その手を
あなたに向かって伸ばすとき
まるで当たり前のようにつながれることを
願っているのです

そして
たとえどんな距離がひらいてしまっても
もうそれは喪失ではないと
思える気持ちも

しっかりと伸ばしながら

この手で

   
    
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