ヒスフェル聖国参戦(十)/朧月夜
「敵の攻撃が止んだだと? 一体何が起こった?」
アースランテの軍団長、エリス・ガザンデは叫んだ。
それに対して、一兵卒であるシュティンガルト・デイが答える。
「は。敵は退却を始めた模様です」
「退却だと? たしかにそうなのか?」
「はい。間違いありません。わたしの目は遠視ですから」
「つまり、目が利くということだな。一体何が起こったのか?」
エリス・ガザンデが再び問う。
「敵は前線に多重結界を敷きました。残っている兵は、弓兵と弩兵のみです」
「なるほどな。やっこさんたち、ナハテ・ガルに引きこもるつもりか。
それとも、首都防衛に徹するのか。何にしても小癪な!」
「お怒りはごもっともですが、ここは援軍との合流を最優先すべきです」
「よし。お前には偵察隊の隊長を命じる。その方の名はなんと言うのか?」
「シュティンガルト・デイと申します。おおせの旨、たしかに承りました」
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