ヒスフェル聖国参戦(八)/朧月夜
「撤退だと? まだアイソニアの騎士と一撃も交えていなというのに!」
フランキス・ユーランディアは、足元の小石を蹴りながら、憎々しげに言った。
「はい。そういう命令です。ユディアス・ガーランドが後陣を務め、
そのほかの部隊は、ナハテ・ガルの砦へと向かいます」
「どういう命令なのだ。アースランテにさらなる侵攻を許せと?」
「いいえ、違います。実は、ヒスフェル聖国がこの戦いに参戦したのです」
「なんだと? あの臆病者のヒスフェル聖国が?」
「彼らは慎重なのでしょう。貝のように閉じこもっていた彼らが動き出したのです」
「ヒスフェル聖国か。彼らの力はどれほどのものなのだろう?
ヒスフェル聖国は魔導にしか力を入れていない。しかし、
その魔力は強大で、ライランテを滅ぼし得るとも言われている」
フランキス・ユーランディアは、眉間に皺を寄せながら言った。
「何にしても、今味方となってくれることは心強い、とだけ言っておこう」
そして、ユディアス・ガーランド以外の軍団は退却の準備を始めた。
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