ヒスフェル聖国参戦(七)/朧月夜
ヒスフェル聖国からの早馬が到着して報告し終えた後、
カイザー・ネルの側近の一人が言った、
「小生に一つ考えがあるのですが、発言をよろしいでしょうか?」
「なんだ。なんでも申してみよ」カイザー・ネルが答える。
「はい。ここはやはり、一時ナハテ・ガルに退却なさっては、
いかがでしょうか。歩兵・騎兵・魔導士ともに疲れ切っています。
彼らに休む時間を与えるというのは……」
カイザー・ネルの側近は、恐縮しつつ述べる。
「ふむ。それは良い。しかし、追撃戦というのは追撃するほうに有利だぞ」
「それです。このアジェスの森の北には、ルブルス河が流れています。
河にかかる橋をすべて切り落としてしまえば、敵の進行を遅らせられます」
「それは妙案だな。全体の流れに気を取られていて、気づかなかった」
「はい。敵兵はいかだを作ってルブルス河を渡る必要があります。
その間、一日、いや半日でも我が軍が休息を取ることが出来れば……」
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