落とし物/ゼッケン
 
何もない画面に向かって
キーボードの文字を打つ
指先だけからおれが生まれる
生まれ変わる、何度でも いつでも
海に沈めたグラスの中の水
青空に掲げて陽に透かして見る
輝いた 
揺れて輝く
さっきまで海だった、ただの水だ いまは
海かどうかなんて水には関係のない話
何度でも、死ぬ 何度でも 
きみの手を引いて歩く砂浜 まだ人が少ない場所
寒い風が吹いてくる 波は引いていく
繰り返し繰り返し 前に出る爪先 砂に少し埋める
かもめ? 
伸ばした指の先のずっと向こうへ
遮られることのなさが
おれに存在の絶対を信じさせている
時間の断面に映った無限
寄せてくる波に濡れて
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